ゼブラウッド
銘木図鑑の第22回。トップレベルに個性的な銘木、「ゼブラウッド」を紹介します。
「その名の通りシマウマのような模様が特徴の個性的な銘木」
【別名】ゼブラノ・ジンガナ
【科目】マメ科 ミクロベルリニア属 広葉樹
【組木屋作品】メビウスの指輪、ハーツ(4U)、猫の箸置き、など
【評価】見た目の個性が非常に強い木なので、人によって評価は分かれますが、この縞々模様に惚れ込んでしまった人にとっては、最高の銘木になるかと思います。
その特徴的なシマシマ模様(縞杢(しまもく)と呼ばれます)ですが、縞の間隔が広いものもあれば狭いものもあり、割と規則的な感じのものもあればランダムなものもあったりと、けっこう個体差が大きくあります。
伐採後の乾燥にはすごく時間がかかって、反りや狂いや割れが生じやすい。また、白太部分は虫害を受けやすくて、そこから雨水が入って腐れや変色も起こりやすい。そのため材木屋さんにとっては、なかなかに扱いにくい樹種なようです。
ただし、組木屋みたいに、十分に乾燥した小さな材を入手して小物を作るだけならば、あまり問題はありませんが。
組木屋評価としては、7.0点としました。
【色・匂・味】濃い茶色と薄い茶色の縞々。色の濃さや縞々の幅や鮮明度には個体差が大きい。
縞々模様は、いわゆる年輪っぽくはない。産地が赤道直下の地域なので、四季の変化によるものではなく、雨季と乾季とか、日照時間の関係などによってできる縞々なのかもしれない。濃い縞が隣の縞と繋がっている場合もあったりして、普通の年輪よりはランダムな模様となっている。
柾目面では細かい縞々模様だが、板目面ではなかなか荒々しい模様になる。
曲面的な加工をすると、模様の変化が面白い。
伐採後の乾燥がかなり難しい木らしく、白太部分まできれいに製材されているものはほとんど見かけない。白太部分は菌が入り、スポルテッドになっていることが多い。
白太部分のみで作った「猫の箸置き」
スポルテッドかつ若干ブルーステインも入った、超個性的な猫たち
匂いは、通常ではほとんどしないが、熱が加わると変な匂いがする。なんとも表現しにくい匂いだが、良い匂いではない。ネット情報では、「かなり臭い」という評判もあったが、組木屋で加工したものでは、そこまでひどい匂いでもなかった。
味は、特にしない。
【加工性】加工方法によって感じる硬さがけっこう違う。バンドソーなどでざっくり切断する分にはあまり硬く感じない(5~6程度)が、糸のこ盤で細かな切断をしているときには意外と硬く(7~8程度)感じることもある。
硬さのムラもけっこうある。縞々が細かいのでほとんどの加工方法では感じられないが、ミニルーターでピンポイントで削るような作業をすると、濃い色の部分の方が硬いことが分かる。色による硬さの差は1.5倍から2倍程度か。意識せず、何気に削っていると凸凹になってしまうので、注意が必要。(硬い部分により多くビットを当てる。柔らかい部分には少なく当てる。)
細いドリルで穴あけする場合も、刃が柔らかい方向へ持っていかれることがあるので要注意。(これは、どうにも注意のしようがないのだけど。。。)刃がたわんだ状態で回転させ続けると、繰り返し荷重により疲労破壊する。(1mmのドリル刃を何本も折ってしまいました。。。分かっていてもなかなか避けられない。)
繊維はそこそこ強く、多少ゴリゴリしたが感じがある。(ウェンジとかほどではないけど。)繊維方向による硬さの差(ミニルーターで削れる速さの差)は3~5倍程度と、なかなか大きい。
逆目もそこそこ強く、特に白い部分で強い。
【仕上】丁寧に磨くと、結構光沢が出て美しい。
ヤスリで1000番ぐらいまで磨いたときに急に艶がはっきりと出だして、はじめて傷があったことに気が付いて、手戻りが発生したりすることがある。
縞々の黒と白とで硬さが違うので、細かい曲面を仕上げるときに、波打ってしまわないように注意が必要。
導管はやや太いが、磨くと意外と目立たなくなる。
1000番まで磨いた指輪の写真 左上は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。右と下のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。下の写真の右側中央にはクラックスケールの0.15mmの線を当てています。導管の太さとしては、0.15mmから0.20mm程度な感じ。
クロガキ(黒柿)と同じように、ほとんど目立たないけどリップルマークが見られることがある。かなり磨いたものでも光の角度によってやっと気が付くかどうかぐらいの目立たなさだったりする。粗材の状態では、加工跡(ノコ刃やプレナーの跡)の方がずっと目立つので、まず気が付かない。
ゼブラウッドのリップルマーク
かすかに横方向の縞々があるのが見えるでしょうか。
光の角度、見る方向によっては全然見えなかったりします。
【その他】「ゼブラウッド」という呼称は、他の樹種にも使われていることがあります。
昔は「タイガーウッド(別名:ゴンサロアルベス)」というウルシ科の木が「ゼブラウッド」と呼ばれていたことがあるようです。(今はほとんど無いようですが。)
しかし今でも「ベリ」という樹種の材が、「ゼブラウッド」という呼称で流通していることがあります。こちらは同じマメ科の木で(属は違うけど)材質も似ていて縞々模様があるのですが、ゼブラウッドほどはっきりしていなくて若干おぼろげな感じ。
ゼブラウッドとベリ
①ゼブラウッド ②「ゼブラウッド」として入手したけど「ベリ」と思われる材
③両方を扱っている材木店から入手したゼブラウッド ④両方を扱っている材木店のベリ
「ゼブラウッド」と「ベリ」とは、両方の実物を見たことがある人ならば、見間違えるほどそっくり、というわけでもないですし、しっかり区別して販売してほしいところです。
木材業界では、曖昧で混乱を招くような呼称が、今でもけっこう多く使われているように思われます。
例えば、「ジリコテ」がカキノキの仲間じゃないのに「シャム柿」と呼ばれるとか、「アフリカンブラックウッド」が黒檀の仲間じゃないのに「アフリカ黒檀」と呼ばれるとか。「カバ(樺)」が「サクラ」と称して当たり前のように販売されていたり、逆にサクラの樹皮を使った工芸品を今でも「樺細工」と称していたり。
歴史的な経緯もあるのでしょうが、樹種に関する分類学などの情報が得られにくかった昔はいざ知らず、今となっては、はっきり間違いだと分かるものに関しては、すみやかに改善されるべきだと、個人的にはそう思うのですが。いかがなものでしょうか。
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