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組木屋 上田

クロガキ(黒柿)・カキノキ(柿の木)

銘木図鑑の第21回。日本を代表する銘木のひとつ、クロガキ(黒柿)を紹介します。

「すべてが唯一無二の模様。国産材最上級の銘木」

クロガキ(黒柿)

【別名】ジャパニーズパーシモン、柿黒檀、(白柿、ホワイトエボニー)

【科目】カキノキ科 カキノキ属 広葉樹

【組木屋作品】メビウスの指輪、ハーツ(4U)、開くアゲハ蝶、猫キーホルダー、など

クロガキ(黒柿)評価

【評価】まず、クロガキ(黒柿)という樹種があるわけではなく、カキノキ(柿の木)のなかで内部に黒い模様が現れたものが黒柿と呼ばれます。

なので「黒柿」というのは、柿の木に現れる杢(もく)の名前ともとらえられるかと思います。

樹齢が100年以上くらいで、かつ土壌の成分などのいくつかの条件が重ならないと黒柿と呼ばれるほどの黒い部分は現れず、昔から大変希少な材として珍重されてきました。

模様の出方も千差万別で、それによって値段も天と地ほども変わってきます。(組木屋評価で材料価格を8点としていますが、これは特別カッコイイ模様のものではなく、まあまあ黒い部分がある小さな材の値段がこれぐらい、ということで)

黒柿の中でも特に希少で高価になるのが孔雀杢と呼ばれる模様のもの。黒柿以外では見られない、最強にカッコイイ杢のうちの一つだと思います。

柿の木でまったく黒い部分がなくきれいな白色のものも、それはそれでなかなか希少で、シロガキ(白柿)とかホワイトエボニーなどと呼ばれることがあります。

柿の木自体が実は、黒檀・エボニーの仲間(どちらもカキノキ科カキノキ属という分類)なのですが、一般的にはそのことはあまり認識されていないかもしれません。組木屋の勝手な提案ですが黒柿のことも「柿黒檀」という呼び方をすると黒檀の仲間だということが分かりやすいと思うのですが、いかがでしょう。

個体差が大きいので一概に評価はしづらいのですが、組木屋評価としては、入手して加工したものの平均的な感じで、8.0点としました。

もちろん、特にカッコイイ杢のものはもっと評価が高くなりますが、大きな材は極端に高価になってしまいます。それでごく小さなものを作ったのでは、せっかくの杢が活かされなくてもったいないですし。なので、組木屋ではだいたい小さな端材を入手して加工しています。

【色・匂・味】色も模様も非常に個体差が大きい。というより同じものは2つとない感じ。

白に近い肌色から薄茶色の部分と、薄墨のような灰色がかった黒からほぼ真っ黒な部分とで、さまざまな模様が作られる。

色合いと模様の出方とでいろいろな呼び方がされる。孔雀杢(緑孔雀)・縞杢(縞柿)・網杢・小豆杢・真黒(マグロ・べた黒)・白黒(パンダ)・墨流し、などなど。

クロガキ(黒柿)孔雀杢

クロガキの孔雀杢 小さな端材の木口面を並べた状態

孔雀杢」と呼ばれるようなもので、稀に模様の輪郭に沿って緑色っぽくなる場合があり、「緑孔雀」などとよばれさらに珍重される。ただしこの緑色は、時間がたつにつれて、また磨くにつれて消えてしまいます。青黒檀の緑色と同じような性質と感じる。

孔雀の羽根のように放射状の模様となるのはほとんど木口の断面だけで、板目や柾目でいかにも孔雀の羽根っぽい模様になることはほぼありません。「孔雀杢」と呼ばれているものでも「これ孔雀か?」と思われるようなものがほとんどなのは、普通木材は板目か柾目で使用されるため。

木口から見て孔雀杢だったものを板目や柾目で切断したものは「網杢」と呼ばれることもあるけど、やっぱり「孔雀杢」という呼称を使いたくなるのでしょうね。

白い部分だけだと「白柿」、黒い部分だけだと「まぐろ・べた黒」、縞々模様になると「縞柿」、白と黒とが比較的はっきりと2色に分かれていると「白黒・パンダ」などと呼ばれたりします。また、水墨画を思わせるような渋い色・模様だと「墨流し」と呼ばれたり。

白黒パンダな蝶々と指輪

匂いは通常ではほとんどしない。加工時には若干、柿を感じさせるような甘くて良い匂いがするものもあるし、古い雑巾っぽい変なにおいがするものもある。同じ材でも削る部分によって匂いが変わったりする。

味は特にしない。

【加工性】硬さに関しても個体差がけっこう大きい。組木屋で加工したものでは6から8ぐらいかな。平均的には、黒檀の仲間の中では硬くない方かと思います。

同じ材の中では、白い部分より黒い部分の方が若干(1.2~1.5倍程度)硬く感じる場合がある。別の材で比べると、色が濃いほど硬いとも限らず、薄墨っぽい色の材の方が硬く感じる場合もあった。見た目では硬さの程度は分からない。

加工性に関しては、いろいろな性質がみんなそこそこな感じ。そこそこ繊維が強い(繊維方向による硬さの差は2~3倍程度)。そこそこ逆目も感じる(逆目加工で若干毛羽立つ)。そこそこ硬さのムラやクセがある(白い部分でも硬く感じることがある)。そこそこ焦げやすい(熱が溜まりやすい感じ。ルータービットでも強く当てすぎると焦げることも)。そこそこ割れ・欠けやすい(割れやすい・毛羽立ちやすいという性質は白い部分の方が強い)。

ということで、細かな加工はそこそこ難しくて、大雑把な加工はそこそこやりやすい、という感じ。

【仕上】磨き仕上げは結構難しい。ヤスリで#400ぐらいではなかなか艶は出ない(逆目で毛羽立つから。倣い目だとけっこう粗いビットでもテカったりするけど。)。1000番ぐらいまで磨いてバフをかけると、やっと艶が出るが、それぐらいまで磨くと逆に細かな傷が目立ってくる。手戻りをしないためには、どの程度まで磨くか見定めて、番手を飛ばさずに着実に磨くべし。

#1500まで磨いた指輪の写真 左上は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。右と下のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。下の写真の右側中央にはクラックスケールの0.08mmの線を当てています。導管の太さとしては、0.08mmから0.15mm程度な感じ。

ほとんど目立たないけどリップルマークがあることがある。かなり磨いたものでも光の角度によってやっと気が付くぐらいの目立たなさだったりする。粗材の状態では、加工跡(ノコ刃やプレナーの跡)の方がずっと目立つので、まず気が付かない。

黒柿のリップルマーク 左側の写真で横方向にある縞々がリップルマークと呼ばれる模様です。右の写真は、まったく同じカメラアングルで光を当てる角度だけを変えた写真。光の角度、見る方向によっては全然見えなかったりします。

【その他】黒柿の用途としては、日本では大昔から工芸品に使われていることが多く、正倉院の宝物のなかにも黒柿で作られたものが多くあるとか。

少し昔ぐらいには、柿の木に近いアメリカの樹種(パーシモン・アメリカガキ)がゴルフクラブのヘッドとしてよく使われていたようで、日本の黒柿・柿の木もクラブヘッドとして使われることがあったそうです。

今でも黒柿は工芸品として多く使用されていますが、特にカッコイイ杢が出た材だと、それから何を作るのか、職人の責任は重大になります。大変希少でそれぞれが唯一無二の模様をもった材なだけに、いかに杢を活かした作品とするか、作る人の腕とセンスが問われてしまいます。

組木屋では今のところ、あまりにも高価な黒柿の材には手を出さずに、小さな材でアクセサリーなどを作っていこうかと思っています。

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