チューリップウッド
銘木図鑑の第9回。綺麗・可愛い系でピンクアイボリーと双璧をなす「チューリップウッド」という材を紹介します。
「王道”ヒロインのライバル” お蝶婦人みたいな感じ?」
【別名】ブラジリアンチューリップウッド・ピンクウッド・「木の宝石」(※ イエローポプラもチューリップウッドと呼ばれることがあるが、全然別の木。)
【科目】マメ科 ツルサイカチ属 広葉樹
【組木屋作品】メビウスの指輪、猫のキーホルダー、ハーツ(4U)、蝶々のペンダントトップ、など
【評価】中世ヨーロッパの王族が好んで使用したらしく、「木の宝石」とも呼ばれているとか。
紫檀・ローズウッドの仲間であるマメ科ツルサイカチ属の種は、2016年にワシントン条約の附属書Ⅱに掲載されて、輸出入規制の対象にもなっています。
ピンクアイボリーにも負けないくらいの鮮やかなピンク色と綺麗な縞模様とで、装飾品などの用途に人気があるが、元々小径木で大きな材が取れない上に、規制もあって、大変希少で超高価。
組木屋での評価としては8.8点としました。
樹種名として、ほんとうは別種で同じ呼び方の材がある「チューリップウッド」は、ややこしいので採用したくなかったのですが、あまりにも定着している感じだし、見た目も明らかに違うし、まぁいいか、と。
【色・匂・味】心材と白太の色の違いが明瞭。もともと白太部分の割合が大きな樹種のよう。
心材は薄いピンクがかった茶色と、濃い赤紫がかった茶色との縞々。その縞々模様の色合いや幅にムラが大きく、大変魅力的な木目になる。色合いや模様に個体差があるので、値段も変わってくる。
白太は黄色がかった肌色で、色ムラも少なく綺麗だが、割れが結構多い。
経年変化で若干色あせる傾向があるらしい。(加工後半年ぐらいでは特に感じないけど。)
心材部分は、加工時に強く匂う。ローズウッドの仲間ですし、薔薇みたいな?芳香剤にありそうな匂いではある。白太部分は熱が加わると香ばしい匂いがするが、普段はほとんど匂わない。
味はよくわかりません。
【加工性】硬くて、刃の消耗が早い(タガヤ三兄弟ほどではないが)。繊維が強く、ゴリゴリとした手応えを感じる。キックバックに注意。若干割れやすく、繊維を横からはがすような方向の力に弱い。油分はほとんど感じない。木屑が粗く(特に白太部分)、目に詰まりやすい。(油分がなくて固まらないから簡単に取れるけど。)
白太と心材の硬さの差は、2倍弱くらい。繊維方向による硬さの差は心材で2倍くらい。白太部分に限れば2.5倍くらい。白太と心材とで質感が結構違う。
逆目が強いので、研磨方向注意。倣い目加工と逆目加工とでは、加工面の綺麗さが全然違う。糸鋸盤で切断した猫とかは、切断面を見ただけでどちら向きに切ったものかわかるぐらい。
部位による硬さのムラが結構あって、心材の白太との境界付近で、色の濃い部分がやや硬度が高い傾向がある、かと思ったら、そうでもない、すぐ横の薄い色の部分が硬くて出っ張ってしまう、という場合もあって、滑らかに加工するのが難しい。←見た目で硬さの予測がつかないという、パロサントで頻繁に経験するタイプの難しさがある。
【仕上】メビウスの指輪は#1500まで磨く。非常に綺麗になるのだが、道管が結構大きいため、そのあとは残る。
左は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。中央と右のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。右の写真の右側にはクラックスケールの、0.25mm幅の線を当てています。
成形時に逆目加工で、繊維がもげてしまった部分を綺麗にするのは大変困難。研削時から、最終仕上げをかなり意識して加工する必要がある。
【その他】実は「お蝶婦人」というのがどういった人物なのか全然知らないのですが。YAWARAでいうところの「本阿弥さやか」さんみたいな感じかな、と想像。(最近の人はこっちも分からないですよね。)
大変魅力的な材であることは間違いないのですが、ちょっと”お高く”なりすぎている感が否めない。
【2018年12月 写真をいくつか追加】