ブラックアンドホワイトエボニー
銘木図鑑の第7回。かなりレアと思われる、ブラック&ホワイトエボニーという材を紹介します。
「とても個性的な見た目だが、実は黒檀の仲間」
【別名】斑入黒檀(ふいりこくたん)・ペールムーンエボニー
【科目】カキノキ科 カキノキ属 広葉樹
【組木屋作品】メビウスの指輪、猫の箸置き
【評価】個性的な見た目をしているが、実はコクタン(黒檀)の仲間で、さらにいうとクロガキ(黒柿)とも親戚。
あまり市場に流通しない希少な材だが、お値段としては”超”高価というほどでもない。わりと流通量の多い縞黒檀と同じぐらいかなという感じ。ただし、個体毎に模様が違うので、特にカッコ良いものは、お値段が高くなる。
組木屋評価としては、なかなか高得点の8.4としました。
【色・匂・味】心材とか白太とかという区別がつなかい。かなりはっきりとした真っ黒と、やや黄色っぽい肌色と、薄い肌色と、もやっとした灰色がかった色の部分もあり、複雑な模様をしている。
黒柿やジリコテの色合いと似た感じだが、それよりは細かな模様。おおむね繊維方向と平行に黒いラインが入っているが、不規則な部分も多く、個体ごとに全く違った表情となり、大変面白い。スポルテッドと表記されていることもある。
模様の出方で、材のお値段はかなり違う。白黒はっきりしていて(灰色が少なく)、黒が多めのものが格好良いので、やっぱり高価なよう。
加工をしたときの模様の出方は様々なので、指輪の木取りをするときにすごく悩む。実際には、ほとんど予測不能で偶然に頼るしかないのだが、どれも個性的な仕上がりになります。
匂い・味は特にしない。
指輪でも猫でも、それぞれに個性的な模様が出て面白い。
【加工性】硬さとしては縞黒檀と同等か、それ以上かな、というくらい結構硬い。
特別に焦げやすいわけではないが、刃がなかなか進まないため、長く当てすぎるといったことがないように、注意が必要。
木屑は乾いた感じで、刃にも詰まらない。見た目ではそう感じないのだが、繊維がかなり強く、キックバックを頻繁にくらう。でも削ってみたら、意外と繊維方向による硬さの差は少ない(1.5倍以下)。(なんか矛盾したことをいっていますが、組木屋では、キックバックが起こりやすい、刃が引っ掛かりやすい、という性質を「繊維が強い」と表現しているため。)
黒い部分と白い部分の一番軟らかい辺りとでは、2倍くらいの硬さの差があるが、白い部分がすべて軟らかいというわけでもない。見た目では分からないので、実際に削ってみて判断するしかない。(組木屋でいうところの「硬さ」というのは、主に、ミニルータで切削される速さ、もしくは糸鋸で切断される速さ、で判断しています。)模様の複雑さの割には、硬さのムラは意外と少ない。
逆目もあるが、強くはない。
【仕上】ヤスリは目にも詰まらないで、良く利く。メビウスの指輪は#1500まで磨いた。黒い部分の削りカスが、白い部分の道管に入ってしまうのが如何ともしがたいが、木肌としてはすごく綺麗。結構光沢がでるが、若干艶消し、みたいな感じ。
左は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。中央と右のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。右の写真の右側にはクラックスケールの、0.08mm幅の線を当てています。
【その他】普通この見た目で、黒檀の仲間だといわれても、ピンとこないかもしれないが、黒柿の仲間だといわれれば、似た色合いだな、と納得できるかと思います。
コクタン・エボニーの仲間とされる樹種は、呼び名が非常に曖昧で、それらの名前は使う人や業界ごとに定義が違っていたりします。自分なりの理解で整理したものを、記事に書こうと思っていますが、もうちょっといろいろ加工して理解を深めてからにしようかと。(最近「幻の銘木」ともいわれるアオコクタン(青黒檀)の端材を入手して加工しているところです。)←黒檀・エボニーについてと、青黒檀の記事書きました。
【2018年12月 指輪の拡大写真追加】