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組木屋 上田

「手作り」と「機械加工」の違い、それと「組木屋の経営方針」


「手作り」の類語としては、手仕事、お手製、手工芸、ハンドメイド、ハンドクラフト、といったところでしょうか。

それに対する「機械加工」は、機械生産、マシンメイド、とか。

単に「製造、製作」といったら機械生産することを指すかと。

手作りの場合は「作成、制作」が使われることが多いでしょうか。

木工において、「手作り」と「機械加工」とでは何が違うのでしょうか。

(まずは、その境界はどこ?という意味で。)

「手作りは、機械(電動工具)を使わない」としたら、どうでしょう?

いやいや。いまどき、電動工具をいっさい使わないモノづくりなんてないでしょう。

極端な話、製材するのに電動工具が使われてたら「手作り」とは呼べないのか、ってなことになってしまいますし。

では何をもって「手作り」と「機械加工」とを区別するのか、組木屋なりに考えてみました。

それは、

「精度を出すために調節するのが、「手」なのか「機械」なのか」

ぐらいではないかな、と考えます。

機械(電動工具)を使っていても、手で微調整をしないことには精度が出せないような工作は、手作りの範疇と考えて良いのではないか、と。

例えば、木を立方体に切断加工するとき、丸鋸盤(昇降盤)という機械を使うとしたら、鋸刃の垂直精度を調整して、ガイドフェンスを精確に刃から何mmかの位置に固定します。あとは安全に気を付けて材料を機械に通すだけ。

材を押す力加減とかありますけど、精度はほとんど機械の性能と事前の調整によります。

こういうのは「機械加工」とよぶべきかと。

これを、糸鋸盤という機械で加工する場合、まっすぐに、垂直に切断しようと思ったら、目と手の感覚で常に微調整しながら材を進めなくてはなりません。(事前に鋸刃の垂直は調整しますが、それだけでまっすぐ垂直に切ることはできません。)

こういうのは「手作り」とよんだらいいのではないかと。

精確に立方体に加工する、なんてのは明らかに機械加工向きです。

微妙な曲線とかは、まだ手作りに分があるだろう、と思われるかもしれませんが、

それでも高価なNCルーターとかには勝てません。

組木屋で制作販売するものは「手作り」のものにこだわります。が、しかし、

同じものが作られるとしたら、「機械加工より手作りの方が良い」ということは、まったくない、と考えています。

結果が同じであれば、手で作ろうが、機械で作ろうが、作品の評価としては一緒であるべきです。

ではさらに、「手作り」と「機械加工」とでは何が違うのでしょうか。

(そのメリット、デメリットは?という意味で。)

「手作り」であることで、有利な点は?

現状「機械」が苦手とする部分、それだけです。

同じものを大量に早く作ることは「機械加工」の方が断然有利です。

(ただし、機械には大きな初期投資が必要。)

精密な加工も「機械加工」の方が断然勝っています。

(どんなに時間をかけても、スマホを同じ大きさで手作りできる人はいないでしょう。)

「機械加工」のデメリットは、初期投資が大きいこと、それしかないと思います。

逆に「手作り」のメリットは、初期投資が小さいこと、それしかないと思います。

なので、「機械」にとっては、投資が回収できないような少量生産が苦手である、といえます。

逆にそこが、初期投資の少ない「手作り」の有利な部分。

(「手作り」でも“腕を磨く”というのは、ある意味、小さくはない初期投資かもしれませんが。)

少量生産であることが重要となるジャンルといえば、例えば装飾品。

アクセサリーなどは“他人とかぶったら嫌だ”と思う人が多いでしょうから、

同じものを大量生産するという行為自体が、商品の価値を下げることになりかねません。

ただし少量生産は、「現状では」機械が苦手、というだけで、コンピューター制御の三次元加工機(3Dプリンター・スキャナー・レーザーカッター・NCルーター)なんかがさらに発達・普及して、安価になったら、「手作り」もうかうかしていられません。

他に「機械」が苦手なこと、といえば。

材料の不均一性(異方性・クセ・ムラ)に対応することも、やや苦手といえるかもしれません。

でもこれは、人間の「手作業」にとっても、対応しづらい、難しいことではありますが。

天然の木材は、不均質な材料の代表格といえるかもしれません。

さらに「オリジナル作品であること(著作権)」が、「機械」に限らず、「他者」の競合に対する防御となります。

そんなこんなで、

組木屋では、「天然の木(銘木)」を使って、「パズル好き」みたいなマイナーな需要を狙った、「オリジナル作品」を、「手作り」で、制作販売していこうと考えております。

「機械加工」に「手作り」で(少しでも長く)対抗するためには、あまり大きな資本が参入してこないところを狙うしかないだろう、と思っています。

これは「将来、人工知能(AI)やロボットに奪われる職業」なんかの議論にも通じるところがあると思います。

機械化・AI化の波は、ただ技術的に「できること」を狙ってくるのではありません。

(単純に、簡単な作業の職から順番に奪われていく、ということではない。)

もうすぐ「できること」かつ「需要(リターン)が大きいこと」を狙って、大きな資本は投入されるはずです。

したがって、AI・ロボットがもうすぐ「できること」のうち、

「①多くの人が同じことをしている職業」と、「②人数は少なくても給料が高い職業」に影響が大きいでしょう。

①②のどちらへの影響が早くて大きいか。

それは技術進歩の速さと生産体制の構築の速さとの兼ね合いで変わってくると思われます。

現状、自動運転の技術が実用化に近いようなので、ドライバーなどの①のたぐいの職業がすべて奪われてから、次に②の職業だろう、と思うかもしれませんが、①が実用化されたからといって、一瞬ですべてが置き換わるものではありません。(ひょっとしたら、車の自動運転よりも、②の職に入りそうな翻訳・通訳の仕事などの方がずっと短期間で置き換わってしまうかもしれません。文学作品や映画などの翻訳は別にしても、日常会話やビジネスで実用に耐える程度までは、もうちょっとかも?)

生産体制が整備されて順次配置されていくあいだに、技術的に②の職業でも置き換え可能となったら、その時点で、費用対効果の大きい②に資本の多くは流れ、優先的に生産されるでしょう。たぶん。(例えば、私が子供のころからの代表的な高給職である飛行機のパイロットなど、離着陸も含めて自動操縦の方が安全性が高いと認められたら?不測の事態への対応もAIの方が的確な判断をすると認められたら?それだったら車の自動運転と同じだよね、となったら・・・。車よりずっと短期間でしょう。きっと。)

一般的な職場であっても、

いろいろできる高価な汎用AIロボットが現れたら、それをアルバイトの代わりに使うでしょうか。

いろいろできるのであれば、そのなかで、できるだけ高給の職に当てることになりますよね、きっと。

でも、技術的に、どのような作業(職業)が”いつの時期に”置換可能となるのか、を予測するのは非常に困難だと思います。(私が高校生のころから、ずっと「外国語の翻訳はもうちょっとで機械がやってくれるようになる。」と思い続けていました。)

それよりは、技術的に可能になったとしても、投資の優先順位が低いであろう職業を予測するほうが、まだ現実的かな、と。

ということで「AI・ロボットに奪われない職」を考えるのであれば、

技術的に(すぐには)できない」という視点だけではなく、

資本が優先的に参入してこない」というマイナーさ、も考慮するべきだろうと思っています。

(前者の「技術的にできるかできないか」という議論はよく見かけるのですが、後者の「資本が投入される優先順位」という視点で論じているものはあまりみかけないので、書いてみました。ついでに「奪われない職」を、もういっこ挙げるとすれば、「今はまだない職」でしょうね。)

そんなこんなで、

組木屋では、マイナーな作品をぼちぼち作って、ほそぼそとのんびりと営業していこう!

と意気込んでおります。

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