「倣い目(ならいめ)」加工と「逆目(さかめ)」加工(その1)
「倣い目(ならいめ)」は、「順目(じゅんめ)」とも呼ばれます。(ゴルファーは、「順目」としか呼ばないと思いますが、木工では、「倣い目」と呼ぶことの方が多いのではないかと。)
「倣い目とか逆目とか、なんやねん?」と、いうのを、組木屋なりに解説してみます。
それは、”木材を加工するときの、繊維方向と加工方向(刃を進める方向)との関係”を表す言葉です。
その影響は、鉋(カンナ)かけをするときに非常に大きいのですが、その他の加工でも無視できるものではありません。(組木屋では鉋はほとんど使いませんが、「倣い目」「逆目」は常に意識して加工しています。)
下の図で、赤いラインで切断加工したい、そして左側の材を使いたい、という場合、左上から右下に切断するのが「倣い目」、その逆が「逆目」となります。
「どっち向きに切断しても、できる形はおんなじやん?」と思われるかもしれませんが、実は「切断面の綺麗さ(粗さ)が、全然違う」のです。なぜか?
まず、木材は長い繊維が束になったようなもの、と思ってください。その束を「倣い目」で切断した場合、(おおげさに描くと)たぶんこんな感じになります。(私も顕微鏡などで見たことがあるわけではないので、ほぼ勝手な想像ですが。)
次に、「逆目」で切断した場合、こんな感じ。
イメージできますでしょうか?「逆目」加工だと、繊維が引きはがされる方向に力が働くので、ささくれ立って、切断面が粗くなりやすいのです。相対的に「倣い目」加工は綺麗に仕上げやすい。
(組木屋では、この”ササクレ”が起こりやすい性質のことを、「逆目が強い」と表現したりします。)
以上が「倣い目」加工と、「逆目」加工との、ざっくりとした違いです。
ササクレで、出っ張った部分を削り落とすだけならば、それほど大した手間ではないのですが、問題は、繊維がはがれて穴になった側。「メビウスの指輪」みたいに、”てっかてか”にまで磨いて仕上げたい場合、この穴がなくなるまで削ろうとすると、大変な手間がかかる上に、形が大きくゆがんでしまうのです。(「メビウスの指輪ってもともとゆがんでんやから、ええやん」というツッコミに、クラフター上田は「ゆがみにも、こだわりがあるんじゃ、ボケェ」と返してやりたい。けど黙っています。)
かなり綺麗に仕上げたい場合、「逆目」加工というのは、非常に困った問題なのです。
「んじゃ、ぜんぶ倣い目で加工すればいいやん?」と思われるかもしれません。しかし「そーわとんやがおろさない」。(ふつう「そうは問屋が卸さない」なんて変換できないし、できても意味わかんないですよね。こどものころ、呪文かなんかだと思ってました。)
単純に「いちいち加工方向を変えるのが面倒」とか、「繊維方向がうねっていたら、現実無理やろ?」みたいなこともありますが、それだけではありません。
特に、組み木作品の場合、共有線(←いつかまた詳述します)というものがあり、切断した両方の材を、そのまま作品として仕上げるデザインのものが多くあります。
1つ目の図で、切断した左側の材も右側の材も、両方使うのです。とすると、どうなるか。
上の図に示すように、 一方(左側)の部材にとって「倣い目」で加工した場合、必然的に、もう一方(右側)の部材にとっては「逆目」で加工することになります。(面倒くさいので図は描きませんが、右側の緑色の部分で”ささくれ立つ”感じがイメージできますでしょうか?。)∴仮定「ぜんぶ倣い目で加工すればいいやん?」は、否定されます。QED。
「んーじゃぁ、やっぱ、どっち向きに切断しても、おんなじやん!」と思われるかもしれません。
ここで、初めの疑問(結論?)に戻ってしまいました。
長くなってきたので...つづきはまたいつか。
(言い忘れてましたが、青字はすべて蛇足なので、読み飛ばしてください。)