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組木屋 上田

ピンクアイボリー


銘木図鑑の第2回。まだ指輪しか作ってないのですが、是非とも紹介したいピンクアイボリー。(指輪以外にもいくつか制作しましたので、追記しました。)

「王道ヒロイン、ドラえもんでいうところの、しずかちゃんみたいな感じ」

ピンクアイボリー

【別名】モモイロゾウゲ(桃色象牙)

【科目】クロウメモドキ科 クマヤナギ属 広葉樹

【組木屋作品】メビウスの指輪、ハーツ(4U)、お箸、リングスタンド、など

ピンクアイボリー評価

【評価】ピンクアイボリーは、組木屋独自の評価基準で、総合9.4点(10点満点中)としました。

綺麗で可愛い系の木材としては間違いなく主役級、メインヒロイン。

アイボリー(象牙)の名がつくとおり、非常に貴重で高価。組木屋だけでなく、一般的にも非常に評価の高い木材。高級な装飾や、小物などに使われているようです。

ただし、色の個体差が大きくて、同じ木でも部位によってかなり色が違う。ほとんどピンク色でないものもあるので、実際の色でお値段がだいぶ違ってきます。

【色・匂・味】心材は、本当にこれが天然の色なのか、と思うぐらいきれいなピンク色のものもある。(木屑さえも、あまりに綺麗で捨てるのが惜しくなってしまう。)

ピンクアイボリー 木屑

ピンクアイボリー 色

個体ごとの色幅が結構大きい。写真の材は組木屋で入手したもの。左の結構濃いピンクから右の薄い色のものまでいろいろ。白太は肌色。心材と白太の境の辺りは、少しオレンジがかった色で、綺麗なグラデーションとなるものもある。

写真の右にある白太ありの材には、繊維と直角方向の縞模様が見られるが、こういう模様は虎杢(とらもく)とよばれる。(これは「縮み杢(ちぢみもく)」かも。小さい材だと区別がつかない。というか、よくわかりません。)ピンクアイボリーで杢(もく)が現れるのは、けっこう珍しいらしい。

普段、特に匂いはしないが、加工時に焦がすくらい熱を与えると、よい匂いがする。サクランボみたいな匂い。

木屑をなめるとかすかに甘味を感じる。

【加工性】非常に硬いが、細かな切削作業をする分には、素直でとても良い。(メビウスの指輪は、硬さの割には意外と作りやすかった。)

白太と心材の硬さの差(ミニルータで削るときの速さの差)は少ない。繊維方向による差も少ない(1.5倍以下。他の材はだいたい2倍以上)。色の濃い部分がやや硬い傾向がある、というか、切削や研磨時には硬い部分程、色が濃く見えてくる。

油分が少なく、木屑はサラサラで刃に詰まらない。逆目で多少毛羽立つ。

かなり焦げやすいので注意が必要。ドリルや電ノコはもちろん、ミニルーターの切削ビットでも焦げることがある。少し焦げるとオレンジ色に変色する。

この焦げやすい性質のため、特に糸鋸盤(アサリ無しの刃)で加工する場合、大変困ったことになる。まず非常に硬いため、鋸刃がなかなか進まないのだが、そのために摩擦熱が溜まってしまう。すると、切断面は真っ黒に。。。表面に色が付くだけではなく、少し奥まで変色してしまうので、この焦げを削って消そうと思うと、0.2~0.5mm程度も削ることになってしまう。

アサリ有りの刃ならば、多少摩擦が少なくなり焦げにくいのかもしれないが、アサリ有りでピンクアイボリー程の硬さに対抗して綺麗に切れるような刃がなかなか見つからない。

当面、糸鋸で切りっぱなし仕上げとするような作品(猫の箸置きみたいな組み木作品)を作るのは諦めます。

ピンクアイボリー 焦げ

アサリ無しの糸鋸刃で切断したら、切断面がこんなに焦げてしまった、という写真。

【仕上】メビウスの指輪は#1500ぐらいまでヤスリかけしてます。すんばらしく綺麗に仕上がります。

ピンクアイボリー指輪

丁寧に研磨すれば、それだけでほんとに象牙みたいなツヤがでます。(すいません、ちょっと嘘をつきました。象牙をじっくり見たことがないのですが、逆算でたぶんこんなツヤなんだろうと想像しました。)

左は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。中央と右のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。右の写真の右側にはクラックスケールの、0.10mm幅の線を当てています。

道管の太さは、0.05~0.08mmぐらいかな、という感じ。

拡大して見ると、繊維方向と直行した方向に細長く、うろこ模様みたいなものが見られた。

【色の変化について】まず仕上げによる色の変化について。

初期に作ったメビウスの指輪数点は、#1500までヤスリで磨いて、蜜蝋クリームを塗ったのだが、特に色の変化はなかった。(今では、メビウスの指輪とハーツ(4U)は無塗装、磨きのみの仕上げとしています。)

ピンクアイボリー 色変化

しかし、下の写真のリングスタンドを作って、同じく#1500までヤスリで磨いて、蜜蝋クリームを塗ったところ、ピンクがオレンジ色っぽく変色してしまった。元々は横に置いてある材とほぼ同じような色だったのだが。。。

ピンクアイボリー 塗装

あまりサンプル数が多くないので確かなことはいえないが、個体によって塗装による色変化がかなり違うよう。組木屋では今後、極力、ピンクアイボリーは無塗装仕上げとするつもりです。(鮮やかなピンク色を確実に保ったまま仕上げられる塗装方法をご存知の方がおられましたら、ご教授いただけますと幸甚に思います。)

次に、色の経年変化について。

組木屋でピンクアイボリー材を入手して加工してから2年ほど経過した時点で、磨き仕上げとしたものに、目立った変化は感じられません。

デジカメで、精確に色を合わせて撮るような写真技術を持っていないので、私個人の感覚的なものですが。

しいていえば、若干、褐色がかってきているかな、という感じ。(元々薄い色のものはオレンジ色に近く、元々濃い色のものはより濃く、変化しているような気がします。)

ピンクアイボリー 経年変化

元々こんな色の材から作ったな、っていうものに合わせて撮った写真。

より長期的な経年変化に関しては、正直なところよくわかりませんので、これからも観察していきます。

とあるサイトでは、「ピンクアイボリーは、使い込むと色が濃くなる」と書かれているものがありましたが、 ひょっとしたら、手の脂が染み込んでいくことによる変化なのかもしれません。

各種木材の仕上げ(磨き・塗装)や経年による変化については、 私も、もっと詳しく知りたいと考えているのですが、なかなか良い資料がみつからずにおります。 長年活動されている木工家の方々は、ノウハウとしてもっているのかもしれませんが、 あまり表に出されないのかもしれませんね。

【お箸を制作してみて】銘木で、家族用にお箸を作りました。

樹種は左から、スネークウッド×2、ピンクアイボリー、青黒檀。​

スネークウッドと青黒檀は、お箸に適した材ですが、ピンクアイボリーは(無塗装では)水に濡れる用途にはあまり適していないことがわかりました。

ピンクアイボリーは、せっかく丁寧に磨いても、水に濡らすと毛羽立って、手触りザラザラ、見た目も白っぽく粗い感じに戻ってしまいます。濡らして、乾かして、また丁寧に磨いて、というのを3回ほど繰り返したら、手触りはあまりザラつかなくなったのですが、色合いはやっぱりダメでした。

またピンクアイボリーのものは、共木から4本(2膳)作ったのですが、なぜかその内の1本だけ、うにゅぅって反ってしまいました。

表面をコーティングするような、造膜系の塗装をすれば問題は解決できるのかもしれませんが、試していないのでよくわかっておりません。

青黒檀とスネークウッドのお箸は、無塗装で、ゴシゴシ洗っていますが、今でも良い感じです。

【その他】ピンクアイボリーは、自分で加工する前は、「なんでこんなにお値段高いんだ?」と思ってました。「色が綺麗なだけで、ここまで値段違うかぁ?」と。でも実際に加工をして納得。これぞ銘木中の銘木だと思います。

色が可愛いだけじゃなく、超優良な材質。(ただし水に濡れる用途には向きません。)

それなりに加工の難しさはありますが、とても素直な難しさ。硬いから切りにくいのも、逆目で毛羽立つのも、熱を加えたら焦げるのも、木材としたらごく普通の性質で、パロサントやリグナムバイタみたいな訳のわからない難しさではありません。

ただし下手なことをすれば、当然焦げたりして怒られます。(のび太君が突然お風呂に現れたりしたら、そら当然怒りますよね。)

【2018年1月 色の経年変化に関してなど追記】

【2018年12月 指輪以外の加工に関してなど、いろいろ追記修正】

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