組木屋作品紹介 平面充填(タイリング)いろいろ
組木屋たいる (KUMIKIYA tiling)
デザイナー:組木屋 クラフター:上田
・組木屋たいるとは
面白い「寄せ木」のパターンを考えたいな、と思って組木屋で考案したいろいろな種類のタイルたち。
はじめに、K1(アメーバ)を考案。
これは平面をほぼ充填するタイルで、いろいろな方法で並べることができるもの。
このK1の五角形のシリーズで遊んでいて、K2(凸凹ペンタ)の形を発見。
K2の形を検討するにあたり「ペンローズタイル」や「強非周期充填」という概念について学んだ。
K2を「強非周期充填」とできないかと検討しているときに、K3シリーズを考案。
K3で「置換ルール(収縮膨張)」や「変換ルール(MLD)」について学ぶ。
その後も、いろいろな「強非周期充填」となる形を考案して、「組木屋たいるシリーズ」とした。
「組木屋たいる」の面白さを伝えようと思うと、いくつかの用語や概念を説明する必要があるので、以下のような項目の記事を書いていくつもりです。
・平面充填(タイリング)とは
いくつかの(有限)種類のタイルで、平面を無限に隙間なく埋め尽くすこと。
タイル張り(Tiling)・寄せ木・テッセレーション(Tessellation)、などとも呼ばれる。
・平面充填における対称性
0.恒等変換(移動量ゼロの変換。つまり何も動かさないこと)
1.並進(平行移動)
2.回転(一点を中心とした回転移動)
3.鏡映(平面上のある線を軸にした裏返し)
1+3.映進(すべり鏡映ともいう。並進と鏡映の組合せ。平行移動して裏返し)
(「1+2.転進、平行移動して回転」という概念も有り得ると思うのだが、平面充填の説明で言及されているものは見たことが無い。)
・17種類の文様群(対称性の型)
移動量がゼロではない異なる2方向以上の並進周期性をもった平面充填を「周期充填」と呼ぶ。
(回転対称性だけをもったものなどは含まれない。)
2次元の平面における「周期充填」は、その対称性によって17種類に分類される。
(17種類ですべてである、ということが数学的にも証明されているらしい。)
この分類のことを文様群(もんようぐん)、壁紙群(wallpaper group)、対称性の型などと呼ぶ。
・周期充填と非周期充填と強非周期充填
2方向以上の並進周期がある充填形を「周期充填(Periodic Tiling)」、そうでないものを「非周期充填(Nonperiodic Tiling)」という。
多くのタイル図形は、周期的にも非周期的にも並べていくことができるが、そうではなく「周期的には並べられないが非周期的にだけ並べられる充填」のことを「強非周期充填(Aperiodic Tiling)」と呼ぶ。タイルを並べていくと「強制的に非周期」になってしまう。その代表的なものが「ペンローズタイル」。
周期的には並べられず、非周期的にのみ充填される「強非周期充填」の代表的なもの。
P1,P2,P3と呼ばれる3種類がある。
・3種類のペンローズタイル P1,P2,P3
ペンローズタイルとMLDの関係にある(相互に局所的に導出できる)プロトタイルセットたち。
・ロビンソンの三角形(黄金三角形と黄金グノモン)
・SIH(ヒトデとツタの葉と六角形)
・TN(タイとナベット)
・ペンローズタイル(P3)とは似て非なる「バイナリータイル」
2種類の菱形、その形は同じだがマッチングルールが違う「強非周期プロトタイルセット」。
・マッチングルールとは
プロトタイルセットを「強非周期」とするために設ける、タイル同士のつながり方を制限するルール。
いろいろな表記方法がある。
・プロトタイルと充填形
平面充填の元となるタイルのことを「プロトタイル」と呼ぶ。
そのプロトタイルを無限に並べた模様(およびその一部を取り出したもの)を「充填形」と呼ぶ。
・3種類の充填形「表」と「裏」と「輪」
「MLDクラス=ペンローズ」の充填形には、組木屋で「表」「裏」「輪」と呼んでいる3種類がある。
もっと無数に種類があるようにも思われるが、本質的にはこの3種類に集約されると考えられる。
・膨張と収縮(細分割)と置換ルール
タイルを並べて自分自身と同形の大きな複製(レプリカ)を作ることができるタイルを「レプタイル」と呼ぶ。
まったく同じ形ではなくても、マッチングルールを保ったままの大きな複製ができれば、タイルを非周期的に無限に充填できることを示すことができる。
大きな複製を作ることを「膨張」、逆にタイルの内部を細かく分割することを「収縮(細分割)」と呼ぶ。
「膨張収縮」により大きさの違う同形のタイルに置き換えることを「置換」、その方法を「置換ルール」と呼ぶ。
(別のプロトタイルセットに変えることは「変換」と組木屋では呼んでいる。)
・MLDと変換ルール
ペンローズタイルP1はP2,P3,ロビンソンの三角形,SIH,TNなどと互いに導出・変換することができる。
このことをMLD(mutually locally derivable)「相互に局所的に導出可能」と呼ぶ。
その変換方法のことを「変換ルール」と呼ぶ。
互いに変換可能なプロトタイルセットの組みを「MLDクラス」と呼び、代表的なものの名前で「MLDクラス=ペンローズ」などと表現する。組木屋たいるのK2,K3,K4,K5,K6,K8,K9,K10はすべて「MLDクラス=ペンローズ」に含まれる。
・タイルの「サイズ(S)」
タイリングを「置換・変換」するときに、それぞれのプロトタイルの大きさがどのような関係になっているのかを示すために「サイズ」という概念を考えて「(S=n)nは整数」というかたちで表現することとした。
(組木屋独自の表現です。)
・K1(アメーバ)
組木屋で考案したタイル図形その1。
「平面を”ほぼ”充填する」という概念で考えられたもの。
タイルの種類自体が、一定のルールで無限に考えられるが、その一部だけを使って様々な方法で「平面ほぼ充填」することができる。(「強非周期」とは無関係。)
このK1アメーバタイルを使って、17種類の文様群(対称性の型)をすべて作ることが可能か、検討中。
組木・寄せ木として面白い、と思っている。
・K2(凸凹ペンタ)シリーズ
2種類の等辺五角形を使った平面充填図形。
マッチングルールを規定しなくても、様々な方法で平面充填することができて、単純に模様として面白い。
枠に詰めるパズルも考案した。
マッチングルールを規定することにより「強非周期プロトタイルセット」となる。
その場合、プロトタイルは7ないし8種類となってしまうが、これをもっと減らせないかと検討中。
「強非周期」にするための検討過程で、いろいろな亜種(シリーズ)を考案して、枝番とか記号がかなりややこしくなってしまった。
3種類のタイルを使った「強非周期プロトタイルセット」
・K3(槍と潰れた五角形と大きい正五角形)
・K3’(ヒトデとハトとヒヨコ)
・K3”(カクカクヒトデとカクカクハトとカクカクヒヨコ)
のシリーズがある。パズル枠も考案。
このタイルでいろいろ検討していて「1方向並進周期充填」という概念を考え出した。
その他のタイルセットの「変換ルール」や「充填形」なども「K3」を基準に考えているものが多い。
・K4シリーズ
3種類もしくは4種類のタイルを使った「強非周期プロトタイルセット」
・K4-1(五六七角形の細胞)3種類
・K4-2(お花っぽい何か)円を含む4種類
・K4-3(正十角形と九角形と七角形と正五角形)4種類
上記はどれも、マッチングルールを規定しなくても形状のみで「強非周期」となる。
・K5シリーズ
3種類もしくは2種類のタイルを使った「強非周期プロトタイルセット」
・K5-1(ファットと凹ペンタ(a , b))3種類
・K5-2(ファットとライク!)2種類
それぞれ「右系」と「左系」がある。
・K6(小舟と蛇)
2種類のタイルを使った「強非周期プロトタイルセット」
「右系」と「左系」がある。
・K7
正七角形を使った「強非周期充填」を検討したいと思っているのだが、今のところ欠番。
・K8シリーズ
円形のタイルを使った「強非周期プロトタイルセット」
円の大きさを変えても「強非周期」の関係を保つものを考案したので、K8シリーズは無数にある、といえる。
K8(1,1)が特に面白くて、「MLDクラス=ペンローズ」の根幹をよく表していると思っている。
・K9(円と枝)
円形のタイルを使った「強非周期プロトタイルセット」
K8シリーズと似ているけど、別物として考えることにした。
K9を膨張収縮しながら重ねたものを「組木屋フラクタル」として考案。
さらに「組木屋フラクタル モアレパズル」というものも考案。
・K10(十角形の太陽と月と星)
十角形のタイル3種類を使った「強非周期プロトタイルセット」
だいたい同じ大きさのタイル3種類なので、実用タイルとしても使えそう。
・その他、K3で遊んでいて発見したこととか
・組木屋タイリングパズル
パズルとして遊べるように枠の形をいろいろ考案。順次追加予定。
特に出来が良いと思えるものをパズルコンペなどに出品していくつもりです。
・K2タイリングパズル
・K3’タイリングパズル
・K5+P3タイリングパズル
・組木屋フラクタル モアレパズル